ホルモンをコントロールしてダイエットを成功させる方法 後編
2017/04/17

栄養士/フィットネストレーナーのシンです
★このブログでは私の2年間の60kgダイエット成功体験をもとに、実際に効果のあったダイエット方法だけをピックアップし、わかりやすく紹介していきます。
今回も前回に引き続き、「ホルモンとダイエットの関係性」のお話です。
前回はダイエットに強い影響を与えるホルモンを紹介しました。今回は、それらのホルモンの分泌量をコントロールして、ダイエットを有利に進めていく方法を詳しく解説していきます。
📚前編:ホルモンをコントロールしてダイエットを成功させる方法 前編
目次
成長ホルモンのコントロール方法
前回も解説した通り、成長ホルモンには強力な脂肪燃焼作用と筋肉増強作用があります。そのため、ダイエットを成功させるには、可能な限り大量に分泌させることが重要になります。
成長ホルモンを大量に分泌させるには、以下のような方法があります。
筋トレ
筋トレには成長ホルモンを大量に分泌させる作用があることがわかっています。ですので、成長ホルモンの強力な脂肪燃焼作用が欲しい場合は、有酸素運動より筋トレを優先して行うようにしましょう。
なお、筋トレ開始から15分ほどで分泌が開始されるので、1回の筋トレは最低でも20分以上行うようにしましょう。
★大量分泌させるコツ★
「加圧トレーニングが成長ホルモンを大量分泌させ、ダイエットやアンチエイジングになる」というのを聞いたことはあるでしょうか?
加圧トレーニングではバンドで血流を制限した状態でトレーニングを行います。そしてトレーニングが終了したときにバンドを緩めて血流制限を開放するわけですが、この「血流の制限→解放」が成長ホルモンを大量に分泌させるキッカケとなるのです。
ですので、筋肥大効果ではなく「脂肪燃焼」だけが目的の場合、加圧トレーニングを中心に行なってもいいのですが、加圧トレーニングを行うには専門スタッフが必要ですし、普通のジムの会費よりも少しお高めなところが多いようです。
そこで、今回は普通の筋トレで加圧トレーニングと同じような効果を狙える方法として「ノンロック法」を紹介します。
スクワットを例に挙げます。普通のスクワットは立ち上がる時に、膝を伸ばしきります(この「関節を伸ばしきる」ことを「ロックする」と言います)。
一方、ノンロック法では膝を伸ばし切らず、動作中は終始、太もも(大腿四頭筋)の緊張が解けないようにします。このように筋肉が常に緊張するようなトレーニングにより、その筋肉への血流を制限することができます。
つまり、関節を伸ばしきらず動作中常に筋肉が緊張している状態を作れば、加圧トレーニングと同等の成長ホルモン分泌効果を得ることができるのです。
このノンロック法はあらゆる筋トレ種目に応用できます。例えば、ベンチプレスでは肘を伸ばしきらないようにする、チンニング(懸垂)では身体を降ろしきらずに、背中の筋肉の緊張を解かないようにする等のやり方があります。
睡眠
睡眠中は大量の成長ホルモンが分泌されます。その量は1日の分泌量の70%にもなります。また、就寝開始~3時間の間は特に多くの成長ホルモンが分泌されます。
ですので、まずは十分な睡眠時間を確保するということが重要になります。ダイエットを順調に進めたい場合は最低でも6時間、可能ならば8時間くらいは確保するようにしましょう。
その次に重要となるのが「睡眠の質」です。睡眠時間が十分に確保できても、眠りにつくまでに時間がかかったり、途中で何度も目を覚ましてしまっては、睡眠の質が低下し成長ホルモンも存分に分泌させることができません。
ですので、睡眠時間の確保とともに、睡眠の質を向上させる努力も怠らないようにしましょう。簡単な方法としては就寝の数時間前からPCやテレビ、ライトなどあらゆる「明かり」の明るさを落とす、室温を快適と感じる温度にしておく(夏:26~28℃、冬:18~23℃)などがあります。
より詳しい方法は↓の記事をご覧ください。
📚参考記事:「寝る子は痩せる」ダイエット・睡眠・ホルモンの関係性
男性ホルモン(テストステロン)のコントロール方法
テストステロンも成長ホルモンと同じく強力な筋肉増強作用と脂肪燃焼作用があります。違いとしては、成長ホルモンは脂肪燃焼作用がより強く、テストステロンは筋肉増強作用がより強くなります。
さて、男性の場合、ダイエット中は特にテストステロン値が低下してしまいがちです。テストステロン値が低下するとダイエットや筋肉づくりは勿論、性欲や精神面にも悪影響を及ぼすので、以下のような方法でテストステロン値を上げていく努力をしましょう。
摂取カロリーを制限しすぎない
ダイエットには摂取カロリーの制限が必須ですが、あまりにも制限し過ぎてしまうと、テストステロン値が大きく低下してしまいます。
では、下限となる摂取カロリーはどれくらいなのか?これには、はっきりとしたデータがないので断言はできませんが、おそらく「体重×30kcal」あたりが下限となるでしょう。体重が60kgの人なら1800kcal以下にしない方が良いということになります。
私の場合、体重×30kcalを下回ったあたりから明らかに性欲が激減します。それまでは「1日1回ペース」だったのが、1週間まったくムラムラしなくなるほどのレベルです。しかし、摂取カロリーを元に戻すと、1~2日で性欲が回復します。
ですので、男性の場合は、いくらダイエットしたいからと言って、摂取カロリーを体重×30kcal未満にはしない方が賢明でしょう。
脂肪の摂取量を制限しすぎない
食物から摂取する脂肪はホルモンの材料となります。ですので、摂取カロリーが適切でも脂肪の摂取量が極端に低いとテストステロンを十分に作り出すことができません。
ダイエット中とは言え、最低でも摂取カロリーの2~3割は脂肪から摂るようにしましょう。
(摂取カロリーが200kcalの場合、脂肪量として44~67g)
筋トレは「時間」ではなく「質」にこだわる
筋トレ時間が60分を超えたあたりから、テストステロン値が大きく減少し始めることが解明されています。ですので、筋トレはダラダラ長時間行うのではなく、必要な種目をテキパキとこなしていき、できるだけ1時間以内で終了させるようにしましょう。
また、種目数やセット数が多くて1時間に収められない場合は、分割法を増やしたり、スーパーセットを組むなどして、筋トレ時間の短縮を図ります。
また、「低重量×高回数」のトレーニングよりも「高重量×低回数」のトレーニングの方がテストステロンを多く分泌させることがわかっています。
ですので、すべてのセットを10回前後行うのではなく、例えばベンチプレスやスクワットのように高重量が挙げられる種目に限っては、4~6回程度挙げられる「高重量×低回数」のセットを組み込むようにしましょう。
性的好奇心を抱き続ける
テストステロンと性欲には相対関係があります。テストステロンが多いと性的好奇心が強くなりますが、逆に性的好奇心を持つことでテストステロン値を上げることができます。
ですので、男性の場合は常に異性を意識し、直接会って、恋をすることでテストステロン値を上げるようにしましょう。
くよくよしない
テストステロンは支配欲、出世欲、攻撃性など精神面に多大な影響を与えます。また、逆にこういった精神状態を無理やりにでも作ることでテストステロン値を上げることができます。
ですので、常にテストステロン値を高く保っていたければ、ちょっとしたことでくよくよ悩んだりせず、常に男(オス)としてドッシリとした精神状態でいることが重要になります。
女性ホルモンのコントロール方法
女性ホルモンは基本的に「脂肪をため込む作用」があるので、ダイエットだけを見れば余計なホルモンですが、当然女性の場合にとっては不可欠なホルモンです。
前回も言いましたが、女性の場合、月経の周期で精神面が大きく左右されるので、「頑張れるとき=エストロゲンが多く分泌されているとき」にダイエットを頑張り、「頑張りにくいとき=プロゲステロンが多く分泌されているとき」は一旦お休みする等の工夫が必要になります。
では、具体的な月経の周期に合わせたダイエットプランを解説します。
生理期間
(約1週間)
この期間はPMS(月経前症候群)がまだ残っていることが多いようです。ですので、精神的に不安定な時はストレスのかかるダイエットは一旦休止しておく方が良いでしょう。
ただし、太ってしまうのはよくないので、軽めの運動やちょっとした食事制限で「体重をキープ」できれば合格としましょう。
生理終了~排卵日の期間
(約1~2週間)
この期間は精神状態も落ち着き、女性ホルモンの観点から見てもダイエットに適した時期となります。1~2週間と短いので、期間限定的に頑張るようにしましょう。「期間限定」とわかっていれば、モチベーションも高く保てるはずです。
排卵日~生理開始までの期間
(約2~4週間)
この期間からPMSの症状が出始めます。やはり精神的に不安定な時は無理をしないに越しとことはありません。しかし、この期間は2~4週間と結構長いので、ダイエットを休止してばかりでは体重が増えていってしまいかねません。
ですので、生理期間同様「体重が増えなければ良し」という考えでいいでしょう。
以上のことから一つ言えるのは、女性の場合「月経の周期に合わせてダイエットプランを立てる」というのが良さそうです。つまり、排卵日~生理開始~生理終了の約1カ月を「ダイエット休止期間」、生理終了~排卵日までの1~2週間を「ダイエット期間」とするのです。
一見効率が悪そうですが、ダイエットはダラダラと長期間やるのが一番効率が悪くなります(代謝低下の関係で)。ダイエットのプロフェッショナルであるボディビルダーも「ダイエット休止期間(=バルクアップ期間とも言う)」と「ダイエット期間」を繰り返すことで、あの筋量と低い体脂肪率を実現しています。
ですので、女性の場合「ダイエット休止期間」では心身ともにリフレッシュを図り、ダイエットのための活力をためておきます。そして、生理終了~排卵日までの1~2週間の「ダイエット期間」を期間限定的に頑張る。
このようにサイクルを組むことで効率的にストレスなくダイエットを成功させることができるでしょう。
インスリンのコントロール方法
インスリンは前回も言ったように、ダイエットにとっては諸刃の剣となります。体脂肪の合成も筋肉の合成も促進してしまうからです。
そんなジレンマ的要素を持つインスリンですが、「インスリン感受性」を高めることが最良の解決策となります。インスリン感受性をわかりやすく説明すると「筋肉や体脂肪にどれだけインスリンが利きやすくなっているか」ということになります。
インスリン感受性が高いと摂取した栄養素が優先的に筋肉に送り込まれます。逆にインスリン感受性が低いと体脂肪に多くの栄養素が運び込まれます。
つまり、筋肉をつけ(あるいは維持し)体脂肪を落としたい場合はインスリン感受性を高くしておく必要があるということです。では、インスリン感受性を高める方法をいくつか紹介しておきます。
運動、特に筋トレを行う
有酸素運動や筋トレを行うことにより、インスリン感受性を高めることができます。筋トレなどの激しい運動では約48時間にわたってインスリン感受性を通常レベルより、高く保つことができます。
つまり、2日置きに筋トレを行うことにより、常にインスリン感受性を高めておくことができ、摂取した栄養素が体脂肪に運ばれてしまう割合を下げることが可能になります。
また、運動直後~2時間の間は特にインスリン感受性が高まっているので、甘いものが欲しくなったときは、筋トレ終了~2時間の間に食べてしまえば、体脂肪の増加を最小限にとどめておくことができます。
また、筋肉量を増加させることにより、筋肉が要求する栄養素量も増加するので、その分インスリン感受性が自ずと高まります。
サプリメントを活用する
インスリン感受性はサプリメントによっても高めることができます。
・α-リポ酸
・EPA(魚油)
・アルギニン
・ケルセチン
・ビオチン
・亜鉛
これらのサプリメントを上手く活用することで、インスリン感受性を高め、栄養素を効率よく筋肉に送り届けることが可能になります。
📚インスリン感受性に関するより詳しい解説はコチラ:インスリン感受性を高める方法 「インスリンを味方につけて、ダイエットを成功させよう!」
甲状腺ホルモンのコントロール方法
前回も言ったように、甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても体調が悪化してしまうホルモンです。しかし、長期的なダイエットでは分泌量が低下してしまい、停滞期の原因となってしまいます。ですので、停滞期に悩まされないためにも定期的に甲状腺ホルモンのレベルを元に戻す必要があります。
では、甲状腺ホルモンを通常レベルに戻す方法を解説しましょう。
甲状腺ホルモンを通常レベルに戻すには「3~5日だけ炭水化物を多く摂取する」という方法をとれば良いのです。
甲状腺ホルモンにはT3、T4と呼ばれる2つのタイプが存在します。このうち大部分を占めるのがT4なのですが、T4のままでは代謝向上などの生理活性があまり強くありません。T4が生理活性の強いT3に変換されることにより、代謝向上などの作用を発揮します。
しかし、極端な摂取カロリーの制限や長期に及ぶダイエットによりT4→T3への変換効率が低下してしまいます。これが停滞期の大きな原因の一つとなるのです。
ここで、数日間炭水化物の摂取量を増やしてやると、T4→T3への変換効率が回復し、代謝量も通常レベル(ダイエット開始時のレベル)に戻すことができます。
具体的な炭水化物摂取量としては「体重×5~7g」とします。体重50kgの人ならば、1日に250~350gの炭水化物ということになります。これを3~5日続けるようにします。
あるいは計算が面倒な場合は「普通の食事に戻す」だけでも構いません。朝・昼・晩の3食で普通に白米や麺類などを食べれば、丁度良いくらいの炭水化物を摂取することができます。この場合は、炭水化物増加量が中途半端にならないように、3食でしっかりと炭水化物食品を食べるようにしましょう。
勿論、この数日間で体重が増えてしまいますが、その大部分は水分増加によるものです。2、3日もすれば元に戻り、その後もトントンと体重が落ちていくことでしょう。
レプチンとグレリンのコントロール方法
レプチンとグレリンは互いにバランスを取り合っています。レプチンが優位になると食欲が低下、代謝が向上しダイエットが順調に進みます。一方グレリンが優位になると、食欲が高まり、ついついオーバーカロリーになってしまいます。
ですので、ダイエットを成功させるにはレプチンを多く分泌させ、グレリンの分泌を抑える必要があります。では、まずはレプチンの分泌量を増加させる方法から解説します。
レプチン分泌量を増やす方法
レプチン分泌を増やす主な方法は以下の2つになります。
チートデイ
レプチンも甲状腺ホルモン同様、極端な摂取カロリーの制限や、長期に及ぶダイエットによって分泌量が低下します。これを手っ取り早く元に戻すには「チートデイ」を取り入れれば良いのです。
「チートデイ」とは、ダイエット中に摂取カロリーの制限を解き、大量のカロリーを摂取する日のことです。大量のカロリーを摂取することにより、レプチン分泌量を回復させ、停滞期から脱出するすることができるのです。
具体的なやり方は1日だけ「体重×50~60kcal」を摂取する、もしくは「1食だけ好きなものを好きなだけ食べる」という方法になります。
体脂肪率によってチートデイを入れべき頻度は異なりますが、一般的には「2週間に1度」の頻度でチートデイを入れるようにします。
チートデイの効果的なやり方は↓の記事に詳しく解説していますので、もっと詳しく知りたい人は参考にしてみて下さい。
📚参考記事:効率的なチートデイで停滞期から脱出しよう!
睡眠
レプチンとグレリンのバランスは「睡眠の時間」と「睡眠の質」がカギを握ります。
睡眠時間が短く、質が低いとグレリンが大量に分泌されてしまいます。仕事が忙しく睡眠時間が十分に確保できない時期に体重が激増してしまう人は多いのではないでしょうか。これはグレリンに原因があったのです。
グレリンを抑制し、レプチンを優位に立たせたい場合は、十分な睡眠時間と質の高い睡眠を取るようにしましょう。睡眠時間としては最低でも6時間、可能ならば8時間取るようにしたいところです。
睡眠の質を上げるには、夜間に強い光を目に入れない、就寝直前の食事やアルコールを控える等の工夫が必要になります。
📚寝て痩せる方法:「寝る子は痩せる」ダイエット・睡眠・ホルモンの関係性
グレリン分泌の抑制方法
グレリン分泌量を抑制するには睡眠以外に「成長ホルモン」が重要となります。と言うのも、成長ホルモンにはグレリン分泌を抑制する作用があるのです。
激しい運動直後は食欲が減退します。これには様々な要因があるのですが、そのひとつが成長ホルモンによるグレリン分泌の抑制なのです。
ですので、グレリン分泌を抑制し食欲をコントロールするには、冒頭でも解説した筋トレや睡眠でしっかしと成長ホルモンを分泌させることが重要になります。
結論
長くなってしまったので、最後に「ホルモンを制してダイエットを制する」方法をまとめておきましょう。
①筋トレを定期的に行う
(ノンロック法を多用する)
②質の高い睡眠を6~8時間とる
③男性の場合、摂取カロリーと脂肪摂取量を制限しすぎない
筋トレは1時間以内に終わらせる
性的・社会的にアクティブな姿勢を保つ
④女性の場合、月経の周期に合わせてダイエットプランを立てる
⑤運動やサプリメントでインスリン感受性を高める
⑥停滞期から脱出するために、適度に炭水化物摂取量を増やしたり、チートデイを取り入れたりする
以上のような方法をとることで、ホルモンをコントロールし、ダイエットを有利に進めていくことができます。ダイエットは気合だけではどうにもならないので、できる限り効率的かつスマートに進めていきましょう。
質問等はコメント欄からお気軽にどうぞ!